前回に引き続き、中小企業の危機突破編について解説してまいります。

新規事業参入の成功事例

社会情勢の変化を逆手にとって、事業のスタイルを変えて新規事業に取り組んだ結果、成功した会社があります。ここでは建設・土木会社の成功事例について3つを紹介します。

まず、鉄道塗装を行っていた会社ですが、バブル期以降、鉄道工事が公共事業の削減と伴って、新幹線を含めた鉄道設置工事及び車両の生産も減少していきました。
車両を作らなければ鉄道塗装の仕事も入らなくなります。今後もバブル期のように新しい鉄道を大量につくることもしばらく見込めない状況でした。それでどうしたかというと、マンション塗装の仕事を開始することになったんですね。

マンション塗装を引き受けるようになったところ、けっこう受注が入るようになりました。マンションの建設ラッシュは1960年代から始まりましたが、築50年以上を経過したマンションが増え初めて来た頃です。

以前のように、人口増によるマンション不足のような時代はしばらく来ない状況です。さらにデフレの影響もあって新しいマンションに買い替えできる資金を持っている人は少なくなりました。

マンションが古くなると劣化が起きてメンテの必要性が生じるようになり、マンション塗装の需要が増えたのですね。
こういった市場に参入して、生き延びたと同時に事業の大きな柱となったのです。

もう一つは総合建設から介護施設・バリアフリー事業への参入事例です。以前に解説したように、1997年の橋本内閣の緊縮財政以降、建設業の市場が減少していきました。ただ、高齢化社会に伴って介護施設やバリアフリーの需要が増えてきました。

そこで介護施設やバリアフリーなどの社会インフラの整備業へ参入し、生き延びようとしたところ、以前にも増して収益が上がるようになりました。

あと、土木工事・資材運搬からリサイクル事業に参入した事例です。リサイクルは21世紀に入って特に注目されるようになりましたが、こういった世間から注目される分野にこそ、新しい事業へのヒントがありました。もちろん、この会社も、以前より増して収益が増加したことは言うまでもありません。

このように、防犯システム会社も新しい市場への参入が必要になってくると思います。

新規事業への参入に関する注意点

最後に、新規事業への参入に関する注意点ですが、ここで紹介した成功事例は「塗装から塗装」「総合建設から介護建設」「運搬から運搬」です。いずれも今の事業の延長上にあるわけなんですね。

例えば、世界トップクラスの車の製造技術を持つトヨタが、いきなりお米を作るといったらこれは難しいでしょう。自動車会社がお米を作ったところでうまくいきませんので、このあたりは重々注意していただければと思います。
現在保有している技術やノウハウの延長上かその周辺から新しい市場に入っていくことが大事になります。

本日は防犯システム設置事業ということで解説してまいりました。こういったことも役に立てればと思います。

(続く)

中小企業 防犯システム会社 経営危機突破編


1.B TO B(企業同士で行われる販売戦略)
2.技術者出身の経営者に多い宣伝軽視
3.営業→業界団体からの仕事依頼がほとんど(建設業に似た構造)
4.経営者は社会・政治情勢の変化にも目を配る
5.ネット広告からの受注が数件あり
6.ニーズがあるかをよく調べる
7.今後(オリンピック終了後)の課題
8.新規事業参入の注意点