恐慌時に世界企業の礎をつくった事例

世界恐慌時の1933年、アメリカの失業率は25%に達し、失業者は1200万人いたと言われています。しかし未曽有の危機において、マーケティング戦略を積極的に展開することで、大きく成長し、世界企業の礎をつくった企業が存在するのです。

P&G~恐慌期に世界企業への礎を作る

世界恐慌時に成長した、代表的な会社としてP&G があります。P&Gは世界恐慌が始まった1929年から1932年の3年間で、売上が1億9千万ドルから9千万ドルまで落ち込んでいます。通常の考えならここで広告宣伝を止めるでしょう。

しかし、このような経営環境においても、P & Gは広告費を削減することなく、積極的に広告を打ち出していきます。この宣伝がやがて功を奏し、P & Gは、1940年の半ばには3億5千万ドルの売上に達します。

世界恐慌時の宣伝効果により、P & G の世界企業への道を加速化させたと言ってもよいでしょう。

ケロッグ社~広告削減から積極的に広告を展開して利益増

また、コーンフレークのケロッグ社は、世界恐慌が始まった当初、広告費を削減する方針を打ち出していましたが、やがて広告予算を引き上げる方向に転換しました。これが功を奏し、競合他社の追随を抑えることに成功し、1933年には30%の大幅な利益増を獲得できたのです。

シボレー社~10倍の売上差があったフォード社を恐慌時に逆転

他に有名な事例がシボレー社です。1920年代のシボレー社の売上は、フォード社の約1/10でした。しかしシボレー社は、恐慌の最中にあって広告予算を増やし、1931年にはフォードの売上を抜いてしまったのです。

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: 397752_s.jpg

宣伝は、不況時を脱し始めた時に巨大な効果を発揮する!?

これらの事例のように、恐慌や大不況時こそ、世界的企業が誕生し、業界ナンバーワンの入れ替えが起きています。

恐慌時は特に消費者の購入意識が落ち、普段以上に財布のひもがきつくなり、多くの企業が倒産します。そのため消費者は買い物を控えるだけでなく、より安全・安心の高い企業の商品・サービスを選別するようになります。

こうした中、多くの企業は生き延びようと、広告予算を大幅に削減し、広告が激減します。しかし恐慌や大不況下において、広告宣伝を積極的に行うことは、その広告を見た消費者に、「この企業の商品やサービスは大丈夫だ」と安心させる心理も働きます。

もちろん、ライバル不在の中、広告を出しても、費用対効果は好況時と比べると悪い方が多いでしょう。しかし、広告の効果は恐慌を乗り越え、景気が回復し始めた時にこそ、最大の効果を発揮するのです。恐慌時に積極的に広告を打ち出していた企業を消費者はよく覚えているのです。

今回のコロナ禍においても、広告の費用対効果がぐんと下がった企業も多いでしょう。とくに緊急事態宣言が出された時期においては、広告の効果が期待できないため、広告を撤退した企業も多いと思います。

しかし、緊急事態宣言下に広告を積極的に出していた数少ない企業は、緊急事態宣言が終わった後、創業以来、過去最大の売上を達成したという声をよく耳にしました。

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: 397762_s.jpg

まとめ

2020年初頭から始まったコロナ不況は、世界経済の急速な減速を見る限り、1930年代の世界恐慌に匹敵する事態と言えるでしょう。

しかし、たとえ100年に1度の経済不況がやってきたとしても、過去最高の売上を達成した企業は存在します。それは大企業、中小・零細企業などの条件は関係ありません。

1930年代の世界恐慌におけるマーケティング戦略は、大企業にも中小企業にも活用できる手法であり、ローカルビジネスを展開する企業においても活用できる手法だからです。

ここまで説明した通り、世界恐慌は大変な事態に違いありませんが、別の見方をすれば、あなたの会社やお店が急速的な成長を遂げ、独占的な地位を占めていたナンバーワン企業が入れ替わる大きな可能性を秘めているとも言えます。

過去の世界恐慌において、成長した企業が採用したマーケティング戦略は、今、あなたの会社やお店でも活用できるヒントが必ずあります。

世界恐慌を生き残り、繁栄するためには、単なる運や直感に頼ってはいけません。必要な考えは、正しい戦略、そして、多くの既成観念にとらわれず、進む勇気です。世界恐慌のときこそ、「正しいマーケティングを実践し、大きな成長軌道に乗せるチャンス」と考えていくことが大切な心構えと言えます。